明治宮殿杉戸下絵(附作成資料)
暁靄古槙
秋卉水月
幽潭水禽
寸法 各 縦 76.5cm
横 160cm
明治20年(1887)
明治20年、宮内省より皇居造営に際し、御杉戸に絵画の謹写をする旨の召命が田崎草雲(そううん)にあり、半年余りの歳月をかけ構想を練り作成した下絵です。
下絵は万葉集および古今集から四季折々の4つの題材をとり、それぞれ2枚ずつ8枚が描かれています。
春をテーマとした「岩上飛泉」(がんじょうひせん)は、早春の滝の傍らに生まれ出た蕨を描いたもので、ゴツゴツした岩の間を流れ、幅広の滝に至る豊かな水と蕨の躍動感が印象的な作品です。
夏をテーマとした「暁靄古槙」(ぎょうかこしん)は、初夏の朝霧の中にすくっと立つ槙の古木を描いたもので、自由奔放に枝を伸ばす古槙の姿が印象的です。一度描いた槙の枝先を短くした様子がうかがわれます。
澄み渡った朝霧の空気が伝わる作品です。
秋をテーマとした「秋卉水月」(しゅうきすいげつ)はゆるやかに流れる川面に満月が映る中秋の夜の風景を描いており、頭をたれるすすきの穂や満開の萩、桔梗の花が秋の風情を伝えています。草むらから虫の声が聞こえるような臨場感あふれる作品です。
冬をテーマとした「幽潭水禽」(ゆうたんすいきん)は山深い池の中に泳ぐかもとおしどりのつがいが描かれており、緊張した空気の中にも微笑ましさが伝わる作品です。
これらの作品は明治21年造営の皇居内奥宮殿(明治宮殿)に設置されたものですが、戦災で夏・冬の2図が焼けてしまいました。
幸いこの下絵があったために、その図がどのようなものであったかを知ることができ、大変貴重な資料です。
併せて杉戸下絵制作に関する宮内庁とのやりとり等の書簡は、制作のいきさつを知ることができ資料として貴重です。
※通常非公開となっております