市街地再開発事業
再開発とは
まず、はじめに一体「再開発」とは、どういうことをいうのかその意味について考えてみることにしましょう。一般に「再開発」といえば、私たちの身近で目にとまるものとして、たとえば、駅前広場・幹線街路の整備とあわせた商店街の改造や事務所ビルの建替えなどが考えられがちですが、この種のものばかりでなく、住戸の規模が狭く、設備や構造が老朽化した住宅の建替え・一部改善とか、ちびっこ広場や歩行者専用道路をつくり、地域の生活環境をよくすることも「再開発」の一つですし、災害の危険や公害の防止のために既成市街地の中から工場を移転させ、跡地を高層住宅団地などにつくりかえることも立派な「再開発」といえましょう。また、ヨーロッパやアメリカにおけるように古い歴史的な建築物を街並みとして保存させる必要がある地区において、建築物の外観を保存しつつ、建築物の内部を現代の生活にマッチした居住環境に近代化するなど街全体の改修と保存を図る「再開発」もあります。(注:ヨーロッパやアメリカにおいては、都市の若返りのための全体的な方策がすなわち都市再開発であると認識されています。具体的には地域レベルあるいは都市レベルでの全体的な整備を目標として「地区再開発」、「修復」、「保全」などの施策を総合的に行ってきています。)
つまり、「再開発」とは、広い意味に解釈しますと、ある時代に一度人間の手でつくられた街や建築物をふたたび新しい時代に合った利用形態につくり直したり、改修・保存したりすることといってよいでしょう。
再開発はなぜ必要か
再開発を以上のように考えますと、再開発は都市に人間が生活するかぎりいつの時代にも行われてきたといえる訳ですが、最近、しきりにその必要性がさけばれているのはなぜでしょうか。
それは、昭和30年代後半以降の経済の高度成長に伴う人口と産業の都市への集中の結果、大都市はもちろんのこと地方都市においても従来までは考えられなかったような環境の悪化、災害危険性の増大、住宅の不足などの問題が起こってきており、これらの問題を解決するため、都市の再開発を今まで以上に強力に推進させていく必要性が強くなってきたからにほかなりません。
もう少し具体的に述べますと、既成市街地における宅地の細分化や木賃アパートの乱立による住環境の悪化、木造家屋の密集地帯における災害危険性の増大、既成市街地から少し離れた郊外住宅地における迷路のような細い道路に沿って建てられた粗悪な住宅群の出現、道路・公園・下水道など都市基盤施設の不足あるいは無秩序な高層マンションの建設による生活環境の悪化などいろいろな問題が生じてきています。
これらの問題、すなわち「都市問題」の解決は、いうまでもなく個々バラバラの改善では限界がありその効果も不十分ですので、都市の将来のありかたについて直接責任を持っている地方公共団体と地域住民が一体となってそれぞれ役割を分担して街ぐるみの再開発を進め、住みよい街によみがえらせることがこれからの都市には是非とも必要になってきているのです。
どのようなしくみで事業を行うか
市街地再開発事業は、「地域住民」、「新しい居住者・営業者」、「地方公共団体」の三者の協力により成り立っています。下図のように新しいビルの建設資金など事業に必要な資金は、土地の高度利用で生み出した余分の床(「保留床」とよびます)を新しい居住者や営業者に売却することによってまかないます。
このような方法で事業資金を調達し事業を行うことにより、地域住民は従前の土地と建物に見合う新しい建物の一部を従後の資産として受け取ります。このようにして従前の権利を新しいビルの床の一部に変換するしくみを「権利変換」とよびます。
また、多くの関係者が財産をやりとりする事業ですから、地方公共団体の認可や事業の進む段階に応じて登記を行うことなど一定の手続きを都市再開発法で定めており、関係者の財産の保護を図るとともに、安心して事業が進められるようになっています。
(出典:『組合施行・個人施行のための図解 市街地再開発事業』)
足利市における市街地再開発事業
足利市における市街地再開発事業は、東武足利市駅前で行われた南町地区第1種市街地再開発事業があります。
根拠法令:都市再開発法