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至誠通天(40) 上司と部下の意思疎通

印刷用ページを表示する掲載日:2017年2月1日更新

足利市長 和泉 聡

   
 年末年始に読んだ本のひとつに『失敗の本質~日本軍の組織論的研究』(中公文庫)があります。ノモンハン事件、ミッドウェー、ガダルカナル、インパールでの作戦、レイテ海戦、沖縄戦と日本軍が坂道を転がるように敗退していく6つの事例をもとに、組織としての日本軍のどこに欠陥があったのかを分析した良書でした。
 

 兵士の数の不足や武器の不足を精神力で補おうとした、行き過ぎた精神主義。暗号が解読され作戦が筒抜けだったことにも気付かなかった情報通信の軽視など、こんな組織の命令のもとに、230万人もの兵士が死んでいったことを思うと、やりきれない気持ちになりました。
 

 中でも印象的だったのは、日本軍部内での意思統一の欠如でした。普段から上司と部下、同僚たちの間での意見交換や意思疎通が希薄でした。そしてその対比として、米軍内部での意思疎通の濃密さを示す次のような事例が紹介されていたのです。「ミッドウェー海戦で勇猛ぶりをうたわれたスプルーアンス少将が、空母エンタープライズの甲板上で、いつも参謀と散歩をしながら、長時間にわたって議論を重ね、相互の信頼関係を高め、作戦計画についての検討を進めると同時に、価値観の統一を図ったというエピソードと比べると(日本軍の意思統一の欠如は)いっそうきわだったものに見える」。
 

 水しぶきを浴びながら、甲板上をゆっくり歩く少将と参謀の姿が目に浮かびました。そして足利市役所内でも、上司と部下、職員たちが時には昼休みにお茶を飲みながら、時には職場の片隅で顔を寄せ合いながら、意見交換し価値観の共有をするための議論をしている。そういう風景が増えれば増えるほど、まちをよくしていく組織の力が強まっていく。そんな風に思ったのでした。