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至誠通天(23) 社会規範と市場規範

印刷用ページを表示する掲載日:2015年7月1日更新

足利市長 和泉 聡

   『見返りを求めない生き方』『損得で考えない姿勢』。私が市長塾で中学生に話をする時、伝えたいことの大事なポイントにしています。
 

 ある大学の先生は、『社会規範』と『市場規範』という言葉で、人間の行動や判断の基準を説明しています。社会規範は「信頼、愛、誇りなど、金銭に変換できない価値で判断する」、市場規範は「市場価値、すなわち金銭で判断する」と定義しています。社会規範は損得で考えない姿勢、市場規範は損得で考える姿勢と言い換えられます。
 

 ある実験があります。二つのグループに同じ作業を無報酬でさせる、二回目には一方のグループにだけ作業の報酬としてお金を与える、三回目には再びどちらも無報酬にする。すると、いったん報酬をもらったグループの作業量が極端に落ちた。つまり、人は一度市場規範に切り替わってしまうと元に戻らない、なので、やる気を維持するにはお金を与え続けるしかない、ということでした。
 

 私が小学校4年生のころです。
友人がある日、「今度のテストでいい点数を取ったら、新しいグローブを買ってくれるとお母さんが約束してくれた」と言いました。私は家に帰ると母に、「うちも、今度のテストでいい点数を取ったら、新しい自転車を買ってよ」とせがみました。すると、母はきっ、と目を見開いて、「よそはよそ、うちはうち。うちは
そういうことはしません」ときっぱり言われました。
 

 勉強は損得でするものではない、自分の人生を力強く歩むためにするものだ、点数がよかったからといって物を買い与えると、この子は物を与えない限り勉強をしなくなるだろう。おそらく亡母は、そんなことを胸に抱いたのでしょう。私たちが共にまちづくりを行ううえでも、大切な考え方だといつも思っています。