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至誠通天(9) 損得を超えた使命感

印刷用ページを表示する掲載日:2014年4月1日更新

足利市長 和泉 聡

 最近、『海賊とよばれた男』(百田尚樹、講談社)を読みました。出光興産を一代で築き上げた出光佐三さんをモデルにした実話に基づく歴史経済小説です。その中で、印象的な場面が2つありました。

 一つは、明治44年、ある資産家が会社の独立資金として、主人公へ無償でお金を提供してくれました。「あなたにあげたのだから、返さなくていい。ただし条件は3つ。家族仲良くやる、独立を貫徹する、そしてこのことはだれにも話さない」。これだけが条件で、当時の勤め人の20年分の年収に相当する6千円という大金をいただいたそうです。

 もう一つは、関東大震災翌年の大正13年、銀行が色々なところから融資を引きあげるという動きの中で、主人公の会社からも、当時の第一銀行が25万円の融資の引きあげを実施しました。しかしそんな中、第二十三銀行(現大分銀行)門司支店が、まるまるその融資の肩代わりをしてくれました。それまでの額に加え、計50万円の融資となり、当時の門司支店の預金総額の2割近くを占める、異例中の異例の融資だったそうです。

 いずれも、損得だけを考えたら、とても成り立たない話です。そこには、関係する人たちの「そろばん勘定を超えた熱い思い」があったのだと思います。ひとつの歴史がつづられる時、歴史に残るような大きな事柄が動く時、そんな時には必ず、志や使命感を大切にする人間の崇高な精神がかかわっている。逆に言うとそれがないと、大きな歴史はつづられないのだな、と思いました。もちろん、収支の緻密な計算を積み上げる作業は大切です。しかしそれだけでは、ことは動かない。志と合わさって初めて、大きなことが動き出す。そんなことを教えられました。