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前田庠主のことば(平成24年11月23日)

印刷用ページを表示する掲載日:2012年11月23日更新

 前庠主中村元先生は、大正元年11月28日、ラフカディオ・ハーンとセツが住んでいた小泉八雲旧居の近く、松江市殿町で男ばかり4人兄弟の長男としてお生まれになりました。中村家は、代々松江藩の武家の流れを汲む旧家ですが、先生が2歳の時に一家は東大の門前にある本郷西片町に移住されました。
 昭和11年、先生は東大文学部印度哲学梵文学科を卒業、同18年異例の若さで同大助教授に抜擢され、同29年教授となり、同39年から41年までは文学部長を務められました。昭和45年に、東洋思想の研究およびその成果の普及を目的とする文部省所管の財団法人東方研究会を東京の神田明神の近くに設立されました。これが現在の公益財団法人中村元東方研究所の前身であり、同48年誰にでも開かれた公開講座としての東方学院を開講されました。同48年3月東大をご退官、同年、同大学の名誉教授、さらに同59年から亡くなられるまで日本学士院会員でした。平成11年10月10日、86歳で亡くなり、文化勲章受章者のご逝去として大きなニュースになり、色々な著名な方々が追悼のことばを書かれました。早いもので、今年は先生のご生誕100年の記念の年であります。
 この記念の年の10月10日、松江に中村元記念館が創設され、開館式が盛大に行われました。記念館には、先生が東京のご自宅で使っておられた書斎や、蔵書3万冊、その他のご遺品が収納されました。
 東京の多磨墓地にある、先生ご夫妻のお墓の墓碑銘には「ブッダのことば」と題して、次のような文言が刻まれております。
一切の生きとし生けるものは、幸福であれ、
安穏であれ、安楽であれ。
一切の生きとし生けるものは幸せであれ。
何びとも他人を欺いてはならない。
たといどこにあっても他人を軽んじてはならない。
互いに他人に苦痛を与えることを望んではならない。
この慈しみの心づかいを、しっかりとたもて。
 これは先生が原始仏典から意訳され、奥様が筆で書かれたものです。先生の人類に対する遺言であり、公益財団法人中村元東方研究所への指針であり、中村元記念館の創立の理念でもあります。感動された松浦正敬松江市長が、記念館の裏手の大塚山にこの言葉を彫った立派な石碑を建て、菩提樹を植えて下さいました。この文言の石碑は、足利市の長林寺の境内にも、中村先生の許しを得た矢島道彦住職の手によって建てられています。

 平成24年11月23日
                                                史跡足利学校  庠主 前田專學